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2007年8月21日 (火)

萬福楼 その2

以前、津嘉山にある萬福楼について評価させて頂いたことがあった。ワンタンスープとラフティ丼が有名な中華の名店だ。今日、3ヶ月ぶり位であったろうか、久しぶりに夕食に訪れた。訪れたといっても自宅から車で10分位の近所なのだ。いつもこの店に行く途中で「今日は何を食べようか」と考えるうちに口内に唾液が溢れてくる。ここのワンタンスープは絶対外せないので「うーん、ワンタンスープとチャーハン、いや焼きそばか」なんてこの日も考えているうちに着いてしまった。店には行儀の悪いカップルが一組いただけだ。TV近くのテーブルには、暇な時間だと主人の徐世力氏がお茶を飲みながらよく休憩している。お嬢さんだろうか、可愛い小学生の女の子が宿題をやっていたりもする。今日は真ん中の座敷が先客によって中途半端に座りずらくなっていたので、そのTV脇の特等席に腰を落ち着ける。そのテーブルには主人の飲みかけだろうか、ビールジョッキにお茶が殆ど減らないまま、残っていた。さて、メニューを決めなければならない。「あれれ、メニューが少なくなっている。」 以前は立派なメニューに伊勢海老とか車海老など高級食材を使った本格メニューがハードカバーで用意されていたのだが、今日は見当たらない。「まあいいや、どうせ高級食材なんて頼まないんだから。」 多分あまり注文が入らないので、手軽な麺系や点心系に絞ったのかもしれない。ワンタンスープとチャーハンを注文した。チャーハンはメニューに見当たらなかったが、フロアを切り盛りする奥さんに聞くと、裏メニューとして作れるという。それにしてもメニューが少なくなった。焼きそばとか、野菜の炒め物なんかもないようだ。厨房を見ると奥さんが準備をしている。「あれれ、ご主人はお休みかな?」 最初はそんな風に思っていた。「まさか、夫婦喧嘩して出てっちゃったとか。」 悠長なことをいっていた。それにしてもメニューに書かれている営業時間が平日17時までになっている。時計を見ると午後9時を回っている。 「今日はやってるのに。」 どうにも釈然としないが、そんな気持ちもワンタンスープが運ばれてきて、吹っ飛んだ。「ズズッ。 ...あれ、いつもより気持ち薄いかな。」 「やっぱり奥さんだから主人と味付けは少し違うのよ。」 なんていいながらワンタンを頬張ると、これはいつものジューシーで香ばしく濃厚な味だ。「やっぱり旨いなあ。」 豆板醤と香酢を少し加えると、味に広がりが出て一層美味しくなる。が、自家製豆板醤も以前と違うような...。 厨房からチャーハンを炒めている香ばしい音が聞こえる。やはり奥さんが作っているようだ。こんなことは初めてである。 チャーハンが運ばれてくる。すかさず口に運ぶ。「ウマい!」 が、少しハラハラ感が足りないような...。 塩加減は以前食べたのより美味しい。あっという間に平らげてしまった。 杏仁豆腐で口直しをしたかったので、奥さんに聞いてみた。あいにく切らしているとのことだが、タピオカミルクならあると言う。結局タピオカを注文するが、これはメニューにはなく、ランチの残りを分けて頂くということで、サービスしてもらった。可愛い器に入ったタピオカは食後のデザートにぴったりで、これで満足満足とう感じだ。「田芋饅頭も美味しいのよ。」という奥さんの誘惑に負け、お土産に2個作ってもらう。奥さんがお茶を継ぎ足しながら、「久しぶりですね。」と声を掛けてきた。それまで会話らしい会話をしたことがなかったが、憶えていてくれたことが素直に嬉しい。「今日はご主人いないんですねー。」 なんて能天気に答えた次の奥さんの言葉が衝撃だった。「...お客さんどのくらい来てなかったかしら。」「3ヶ月位は来てなかったと思います。」 「実は主人は2ヶ月前に急逝して...今は私が跡をついでやってるんだけど、同じ味が出せてるのか心配で...」 「えっ...」 言葉が出なかった。 前来た時は元気に厨房で鍋を振るっていたのに...。 ここで全てが分かった。 だからメニューが少ないんだ。だから営業時間が短いんだ。だから奥さんが作っているんだ。だから徐シェフがいないんだ...。「じゃ、じゃあこのお茶は...? よくこのテーブル席でご主人が休憩されてましたよね。」 「そう、お供えのつもりなの。このテーブルに座ると主人の気を貰えるわよ。」 健気に笑っていうが、7キロも痩せたというその体からは、料理はともかく経営なんてしたことがないという、大きな不安と悲しみと、脳溢血で急逝したご主人の跡を立派に引き継いで行こうという力強さが見え隠れしてた。「そのお茶を見て、まだ毎日泣いているの...。 でもお客さんに励まされ、何とか同じ味を出したいって思ってるんだけど、不安で不安で...。」 「でも今までご主人が一人で料理作ってたんですよね。 よくこんなそっくりな味出せますね。」 「長年助手として、連れ添って来たんだもん。それにチャーハンは私の方が美味しいはずよ。」 確かにそうだと思った。「子供を育てながら宜野湾からこの店に通っているので、私が子供を心配するより、子供達が私を心配するの。あんまり頑張り過ぎないでって。 だから近所に店を移すことも考えているの。」 (確か2号店を平和通りに出すはずだったのに...悲しすぎる) 頑張って欲しい。いや、既に十分頑張っている。逆に力を貰った気さえする。この日は店を閉めて仕込みをしていたら、お客さんが来てしまったので、急遽開けたらしい。我々が入れたのはあくまで偶々だったのだ。「折角お客さんが来てくれるんだもん、入って頂かないとね。」 と話していると、また何も知らない新しい客が入ってきたところだった。店の前には大事そうにラフティー丼を抱えた徐シェフがまだ笑っていた。

家に帰って田芋饅頭を食べるとほのかな甘みに少し酸っぱいものが混じってしまった。 故・徐世力氏のご冥福を心よりお祈りすると同時に、今後の萬福楼の発展をお祈りします。

萬福楼
沖縄県南風原町津嘉山1467-4
098-889-2927

注) 平日は17時まで、土日は20時までとのことだ。電話をしてから行った方がいいと思う。

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コメント

この前、店の前を通ったらお店自体が無くなっていました。大好きな満福楼さんは、一体、何処に移転されたのでしょうか?お教え下さい。

投稿: 藤原 浩 | 2007年11月 5日 (月) 19時21分

本当に突然のことで私も驚きました。
ご冥福を祈るとともに、ご家族の今後の幸せを願わずにはいられません。
お店のほうですが、与那原警察署のそばにて
12月初旬くらいから再開する予定と聞きました。私は内地なのですぐには行けませんが、沖縄に旅行に行ったらまず行って見たいと思います。忙しくない時間を見計らって、またゆんたくできればいいなぁと思っています。
ワンタンスープとラフテー丼をとりあえず注文したい!

投稿: しらがー | 2007年11月21日 (水) 23時31分

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